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歯周病菌

歯周病菌


お口のばい菌は、300~400種で、
歯周病の時は、1,000種を超えるのではと言われています。

目次
  1. 位相差顕微鏡による歯周病菌の観察
  2. 歯肉縁上細菌叢の時間的変化
  3. 歯周病(歯槽膿漏)における細菌叢の部位別の特徴
  4. 代表的な菌の形態的特徴など
  5. 歯周病菌検査PCR法

位相差顕微鏡による歯周病菌の観察

  • 生きた細菌を、患者さんと共同診査が行える、貴重な検査法です。
  • 悪性の強い嫌気性桿菌、運動性菌の有無、Treponema denticola、などを調べます。
下記の利点があります。
  1. 起炎菌を知る事により、歯周病(歯槽膿漏)のタイプを判断できます。
  2. タイプにより、大まかな治療方針を決定できます。
  3. 薬(抗生物質)を使用する際は、その選択基準になります。
  4. メインテナンス間隔を決定することが出来ます。
口腔内細菌(顕微鏡ビデオ)の一例
比較的状態の良い方 動き回る菌が少ない

その他、細菌学的検索法として、下記の方法がありますが、一般的ではありません。
  • DNAプローブによる菌の同定
  • その他、蛍光抗体法、培養、酵素活性の測定

・ 細菌叢の基礎的知識

 顕微鏡で観察する前に、基礎的知識として、
  • 細菌叢の時間的変化
  • 部位的特徴
  • 各種菌の形態的特徴
などをお知らせします。

歯肉縁上細菌叢の時間的変化

  • レンサ球菌はどの過程においても主体を占めます。
  • 形成後間もない歯垢より、古い歯垢の方が、線状菌が多くなります。
  • これにアクチノマイセス、フゾバクテリウム、コリネバクテリウム、ベイヨネラ等が増加してきます。
  • 活動性の高い部位ではスピロヘータや運動性菌の占める割合が高くなります。
  • 結論 : 顕微鏡で観察した際、線状菌や運動性菌が少ない方が良いと言えます。

歯周病(歯槽膿漏)における細菌叢の部位別の特徴

歯肉縁上プラーク

  • 歯面清掃後数分以内にペリクル(獲得皮膜)形成。ペリクル上に細菌が吸着し、プラークが形成されます。
  • 初期には好気性菌のNeisseriaやNocardia、通性嫌気性菌のStreptococcusやActinomycesなどが大多数となります。
  • 3-5日経過後、成熟プラークとなり、Veillonella,Fusobacteriumなどの偏性嫌気性菌やSpirochetesの割合が増してきます。

歯肉縁下付着性プラーク

  • 歯根に付着したプラークは、成熟した縁上プラークと同じです。
  • これが石灰化し縁下歯石となります。

歯肉縁下非付着性プラーク

  • グラム陰性桿菌(P.gingivalis,P.intermedia,forsythusなど)、Spirochetesなどが多くみられ、歯周炎にとって大きく有害です。
  • SRPにより嫌気性グラム陰性桿菌を減少させられるが、12-16週後には、元に戻りやすくなります。
  • そのため、定期的なメインテナンスリコールによってプラーク除去が必要です。

組織内に侵入する細菌

  • Spirochetesは強い運動性があり、歯肉組織内に侵入します。
  • A.actinomycetemcomitans,P.gingivalisも、歯肉組織内に侵入します。
  • 歯肉組織内に進入した菌は、根表面のSRP等による機械的清掃でも、排除できないでしょう。
  • 縁上プラークは縁下まで切れ目なくつながっており、縁上プラークを除去する事により、縁下プラークもある程度コントロールする事ができます。

代表的な菌の形態的特徴など

Streptococcus(ストレプトコッカス レンサ球菌)

グラム陽性通性嫌気性球菌。非運動性。
0.6~0.8μの球状菌が数珠状に連なっています。

Actinomyces(アクチノマイセス)

嫌気性非運動性放線菌。
直径0.5- 1.0 μの線状菌で、細長い分岐する菌糸を出して発育し、時に断裂して短桿菌状または球状になります。
細菌と真菌の中間に位置するが分類上は細菌に属します。

Porphyromonas gingivalis (ポルフィロモナス・ジンジバリス)Pg菌

歯周病菌として有名で、空気を嫌い、歯周ポケットの奥に潜み炎症をおこします。
Genus Bacteroides(バクテロイデス属)
偏性嫌気性桿菌。
バクテロイデス属 Genus Bacteroidesは、正常細菌叢の構成菌です。
しかし、嫌気性菌感染症の中で、バクテロイデス属が最も頻度が高い(50%以上)という性質の悪い菌です。

Tannerella forsythensis(タンネレラ・フォーサイセンシス)Tf菌

紡錘状の形をした細菌です。
P. gingivalis やT. denticola と共に検出される部位は、歯周病が進行している部位です。

Prevotella intermedia (プレボテラ・インターメディア)Pi菌

女性ホルモンによって活発に発育する菌です。思春期性や妊娠性歯肉炎に関連しています。
P. melaninogenicus, P. oralis, P. disiens, P. bivius, P. buccale

Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム)Fu菌

菌端が尖って紡錘型 多くは非運動性 両端が鈍円の小桿菌 0.5~1.0μ×1.4μ。
Prevotella, Borrelia属菌との混合感染によりVincent's anigina(潰瘍性口内炎)を起こします。

Leptotrichia(レプトトレキア)

桿菌。糸状の長いフィラメントを形成。大型。1~1.2×5~15μ。

Aggregatibacter actinomycetemcomitans(アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス) Aa菌

短桿菌。
侵襲性歯周炎(急に進行する歯周病)に関係する菌として有名です。

ビブリオ

ソラマメ状で鞭毛を持ち、グリグリと活発に動きます。
0.3~0.6×1.0~5.0μ。

Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコーラ) Td菌

非常に特徴的で、細長いラセン状の菌。
活発な回転運動をしているのが見え、不気味です。
この菌がいる部位は、歯周病が進行していたり、進行中の場合が多く、注意が必要です。
急性壊死性潰瘍性歯肉炎(ANUG)や、急速進行性歯周炎で多く見られます。
  • トレポネーマ 短め 3~16μ
  • ボレリア   長め 8~18μ

参考
 らせん状のねじれ1回=ビブリオ
 ねじれ2から3回=カンピロバクター、スピリルム
 ねじれ10数回=スピロヘータ

※ Red complex(レッドコンプレックス)
Porphyromonas gingivalis 、Treponema denticola、Tannerella forsythensis は、Red complex(レッドコンプレックス)と呼ばれる細菌群で、重度の歯周病患者さんから検出されると言われています。
複数の種類の細菌があつまり、害を及ぼすというものです。

※ 細菌名の変更
細菌の分類は、細菌学の進歩とともに細分化され、細菌名が変更されます。ですから、資料によっては、同じ細菌を示していても、細菌名が違う事があります。当ホームページでは、最新の情報に更新するようにしております。

歯周病菌検査PCR法

正確に菌を定量的に調べたい場合は、歯周病菌検査PCR法(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)を用います。
代表的な6種類の菌の量を調べ、歯周病型の判定と薬(抗生物質)の選択基準にします。
費用は1万円以上かかりますので、一般的とはいえません。

PCR法で調べる菌の種類

  • Aa菌 Actinobacillus actinomycetemcomitans
  • Pi菌 Prevotella intermedia
  • Pg菌 Porphyromonas gingivalis
  • Tf菌 Tannerella forsythensis
  • Td菌 Treponema denticola
  • Fu菌 Fusobacterium nucleatum

歯周病細菌数比率ハイリスク値

  • Aa菌比率 0.01%以上
  • Pi菌比率 5%以上
  • Pg菌比率 0.5%以上
歯周病細菌数比率ハイリスク値より多い場合は、その菌によく効く薬(抗生物質アジスロマイシン、レボフロキサシンなど)を服用し、集中的にSRPを行います。


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